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2016.9.8 : リオパラリンピックが開幕





リオデジャネイロパラリンピックの開会式が7日に行われ、南米で初めてとなる大会の幕が開けました。
リオデジャネイロパラリンピックは159の国と地域、それに難民選手団を合わせた4400人余りの選手が参加して、12日間の日程で22競技・528種目が行われます。
開会式は7日、日本時間8日午前6時すぎからマラカナンスタジアムで行われました。式は冒頭に、車いすに乗った人が17メートルの高さがあるスノーボード用のスロープから華麗なジャンプを見せて華々しく始まり、「限界のない心」をテーマに、車いすの人たちと健常者が一緒にダンスを披露して会場を盛り上げました。
このあと選手たちが入場行進し、オリンピックに続いて初めて結成された難民選手団の選手たちが先頭で姿を見せると、会場から大きな拍手が送られました。日本の選手団は、アルファベット順で82番目に登場し、旗手を務める車いすテニスの上地結衣選手を先頭に笑顔で手をふりながら行進しました。
そして、スタジアムに到着した聖火がパラリンピックのメダリストたちによってリレーされ、ブラジルで最も多くのメダルを獲得している競泳のクロドアルド・シルバ選手が最終ランナーとして聖火台に灯をともし、パラリンピックが開幕しました。

開幕 新大統領にブーイング

リオデジャネイロ・パラリンピックが8日夜、マラカナ競技場で開幕した。ブラジルの子供たちがパラリンピック旗と共に入場し、4300人以上の選手が行進した。正式に大統領に就任したばかりのテメル新大統領が開会宣言のために登壇すると、観客席から大きなブーイングが起きた。
リオ大会が開幕した同じ日、約1万2000キロ離れたロシアのモスクワでは「もう一つのパラリンピック」が始まっていた。国主導のドーピング違反が発覚し、267人全員がリオ大会から締め出されたロシア選手たちの代替大会だ。タス通信によれば、ムトコ・スポーツ相は開会式のあいさつで選手らに謝罪しつつも「我々のパラリンピック出場を阻んだ人々に神の裁きを」と恨み節を述べた。
7月に世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームがまとめた報告書はスポーツ界に衝撃を与えた。モスクワの検査機関の元所長が政府の指示を受け、選手の検体の廃棄やすり替えをしていたことが明るみに出たのだ。組織的な不正はパラリンピックにも及んでいた。スポーツの価値を根底から覆す事態にIOCとIPCでは姿勢が分かれた。IOCは選手個人の権利を考慮して違反歴のないロシア選手団の大半の参加を認めた。その対応にWADAは猛反発して各国メディアや選手からも「弱腰」との批判を集めた。また、 リオ五輪では入場券の不正転売に関与した疑いでIOCのパトリック・ヒッキー理事(停職中)が逮捕された。競泳男子のライアン・ロクテ選手(米国)は警察に虚偽の強盗被害を届け、ブラジル国民を怒らせた。リオ五輪はスポーツのインテグリティー(高潔性)が問われた。
一方、IPCはロンドン大会の金メダル数で中国に次ぐ2位と躍進したロシア選手団を全面的に除外した。IPCのフィリップ・クレーブン会長は開会式のスピーチで「誇り高きパラリンピアンはスポーツ界のロールモデル(手本)だ。我々は公平に競技が行われるように準備してきた。正々堂々と戦ってほしい」と力を込めて、高潔性を保ったという自負をにじませた。
だが、その強硬姿勢は亀裂を生んだ。「もう一つのパラリンピック」だけでなく、開会式ではロシアと関係が緊密なベラルーシの選手団の男性役員がロシア国旗を掲げて連帯をアピールした。IPCは役員の参加資格を取り消した。ベラルーシのエイスモント大統領報道官が「政府も役員の立場を共有している」と述べると、露外務省のザハロワ報道官はベラルーシに感謝を示した。さらに批判的に報じた英国メディアなどに対して「ファシズム(全体主義)だ」と怒りをぶつけた。開会式にIOCのトーマス・バッハ会長の姿はなく、両組織に距離を感じさせた。
ただし、IOCの事情は深刻だ。表向きは元西ドイツ大統領の葬儀に出席するのが理由だが、AP通信などは、ブラジル警察当局はヒッキー氏がバッハ会長とかわした電子メールについて事情聴取する意向だったと報道。バッハ会長の欠席は事情聴取を回避するためとの見方も広がっている。
リオに熱気が戻ったこの日、米国オリンピック委員会はロクテ選手に10カ月の出場停止処分を科したという。IOCは大会が終わっても疑惑や不祥事の後始末に揺れている。毅然(きぜん)と高潔性を訴えて開幕を迎えたIPCとは対照的だった。
困難が続いた大会準備を象徴していた。開会式で大会組織委員会のカルロス・ヌズマン会長がブラジル政府などを挙げ「大会の成功に力を合わせた」と感謝を述べると観客のブーイングが鳴りやまず、演説は70秒間中断した。国家会計を不正操作した背任罪で失職したルセフ前大統領に代わって就任したテメル大統領による大会の開会宣言もブーイングにかき消された。
社会情勢の不安はリオ・パラリンピックに影響を及ぼした。8月中旬時点で入場券は12%しか売れず、スポンサー不足もあり資金難になった。8月19日にはIPCのクレーブン会長は「56年間のパラリンピックの歴史で直面したことがない状況」と危機感を示した。しかし、リオ五輪の閉幕後、熱気は一気に高まった。競技会場を変更して輸送費を減らすなど経費を削減した。リオ市と連邦政府も財政援助をした。入場券販売も持ち直し、史上2番目の売上枚数だった08年北京大会の170万枚を上回る見通しだ。クレーブン会長は7日の開会式前の記者会見で「前例のないチームワークを見せた」と喜んだ。
世界の裾野も広がりつつある。IPCによると、今大会は159カ国・地域と難民選手団の計4432人が参加する。女子は12年ロンドン大会より12%増で史上最多の1621人となった。競技レベルも向上した。陸上男子走り幅跳びで右足が義足のマルクス・レーム(ドイツ)の持つ世界記録8メートル40は直近3大会の五輪の優勝記録を上回る。
IPCによると、テレビ放送をするのは、ロンドン大会と比べて32増の154カ国。米NBCテレビが最低66時間放送する予定で、フランスでは計100時間の生中継を行う。スポーツ大会としての価値は確実に高まっている。


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