2016.9.6 : 日中首脳会談 尖閣 衝突回避
安倍晋三首相は5日夜(日本時間同)、中国の習近平国家主席と中国・杭州市で約35分間、会談した。首相は、沖縄県・尖閣諸島周辺で8月、中国公船による領海侵入が相次いだことに対し自制を求めるとともに、
南シナ海問題で法の支配を重視するよう促した。両首脳は、偶発的な軍事衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向けて協議を加速することで一致した。
会談の冒頭、習主席は「中日関係は時に複雑な要素に妨害され、脆弱な一面も突出している。妨害を排除し、一日も早く正常な発展の軌道に戻すよう努力しなければならない」と表明。首相は「困難な問題も少なくないが、戦略的互恵関係の考え方に立ち、安定的な友好関係を築いていきたい」と応じた。
首相は、尖閣周辺での中国公船の活動について「公船や軍の特異な活動は極めて遺憾だ。一方的に緊張をエスカレートさせるべきでない。東シナ海の安定なくして日中関係の安定はない」と状況の改善を強く要求。習主席は「東シナ海の平和と安定を維持する。両国が衝突するようなことがあってはならない」と述べた。
中国が東シナ海の日中中間線付近で開発を続けるガス田問題を巡っては、2008年の共同開発に関する政府間合意に基づき、交渉再開に向けて協議することで両首脳が合意した。これに関連し、両政府は高級事務レベル海洋協議を今月14日に広島で開催する。
首相が呼びかけた海空連絡メカニズムは12年6月に防衛当局間のホットライン設置などで基本合意したが、同年9月の尖閣国有化に中国が反発し、協議が中断している。
焦点の南シナ海問題では、首相が「地域の平和と安定に直結し、日本を含む国際社会共通の関心事項である南シナ海問題で中国の適切な行動を期待する」と述べたのに対し、習主席は「日本は当事者ではないのではないか」と反論。会談では中国の主張を否定した7月の仲裁裁判所の判決に関するやり取りはなかった。
新華社通信によると、習主席は「東シナ海の問題を適切に処理し、ともに平和と安定を守るべきだ。日本は南シナ海問題で言動を慎み、関係の改善に障害を作ることを避けるべきだ」と自国の原則的立場を強調した。
首相は11月にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた再会談を呼びかけたが、習主席は明確に返答しなかった。ただ、習主席は関係改善に向け「マイナスを減らし、プラスを増やすべきだ」と述べ、首相も同意した。
両首脳の会談は3回目で、昨年4月にジャカルタで行って以来約1年5カ月ぶり。南シナ海問題で日本が中国に仲裁裁判所の判決受け入れを繰り返し求めたことに中国側が反発し、日程調整が一時難航した。