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2016.9.1 : 台風観測に機器直接投下




台風の勢力について気象庁などは現在、主に気象衛星が撮影した画像を基に推定している。
だが、間接的な観測のため誤差が避けられず、その後の勢力変化の予測精度も落ちる。この解決のため、名古屋大などは航空機を使った台風の直接観測を計画している。
観測には琉球大と気象研究所のほか、頻繁に台風に襲われる台湾の台湾大学と台湾中央気象局が参加する。
台風予測の2本柱は勢力と進路だ。進路は気圧が低い方へ進む、上空のジェット気流に流されるなどの法則があり、周囲の気圧配置などから予想しやすい。精度も少しずつ向上している。
勢力にも、気圧が低ければ強い、気温や湿度が高ければその後発達しやすいなどの法則がある。台風が南方の海上にある場合、気象庁は付近を航行する船舶から報告される気象データを参考にするが、 観測ポイントがまばらで詳しい状況が把握できない。そこで観測の主力になるのは気象衛星ひまわり。撮影画像で目がはっきりしているか、雲の渦は丸くまとまっているかなど、過去の例を加味した形のパターンで勢力を推定する。
研究チーム代表の名古屋大・宇宙地球環境研究所の坪木和久教授(気象学)によると、強い台風ほど過去の例が少なく、勢力推定の精度が低い。観測機関でも判断が分かれ、 西部北太平洋で平均風速(10分間)が54メートル以上になった「猛烈な台風」は近年、米国の合同台風警報センターでの観測では毎年5個以上、日本の気象庁は2年に1個程度と大きく食い違っている。だが、どちらが正しいのか分からない。その後の勢力予測も、過去20年であまり精度が向上していない。
そこで研究グループは、台風上空に航空機を飛ばし、パラシュートがついた「ドロップゾンデ」という観測機器(長さ20〜30センチの円筒形)を何カ所にも投下。 20〜30分の落下中、気温、湿度、気圧、風向、風速を観測し、データを無線で航空機に送る。場所は、沖縄本島の南方で行う。予測精度が特に低く、進路が日本本土方面に変わるポイントとなることが多い重要な海域だ。
データは名古屋大が開発した台風の発達や動きを予測するシミュレーションモデルに入力。データ取得後の実際の変化も取り入れながらモデルを改良し、予測精度向上を目指す。今年度中にテストフライトを実施。本格観測は来年8〜9月ごろに予定し、2020年まで多くて年に2〜3回行う計画だ。
坪木教授は「地球温暖化で平均風速が60メートルを超えるスーパー台風が増えると予想されており、勢力が強い台風ほど予測精度が悪いのは防災上大きな問題だ。今回の直接観測を被害軽減の第一歩にしたい」と話している。


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