2016.9.16 : 民進党 代表に蓮舫氏
民進党は15日、東京都内で臨時党大会を開き、岡田克也代表の後任に蓮舫代表代行(48)を選出した。民主党時代を通じて女性の代表就任は初めて。蓮舫氏は1回目の投票で過半数を獲得し、前原誠司元外相(54)と玉木雄一郎国対副委員長(47)を破った。選出後のあいさつで「私たちが向かうべきは巨大与党だ。批判ではなく提案力をもって戦い、
選択してもらえる政党にしたい」と呼びかけ、自民党との対決姿勢を鮮明にした。
任期は2019年9月末日までで、任期中に衆院議員の任期満了(18年12月)を迎える。次期衆院選は蓮舫体制で戦うことが想定され、党勢の回復が課題だ。蓮舫氏は記者会見で26日召集の臨時国会に関し、「政府の補正予算案を精査し、このお金の使い方で本当にいいのか、選択肢を示すような国会論戦の準備に入る」と強調した。
憲法改正の党内論議のため、調査会の設置を検討する考えも表明。「憲法審査会には参加するが、性急すぎる論点整理や運営には慎重に対応する」と述べた。また、15日夜のテレビ朝日番組で、新幹事長について「論戦力を持った人。重い方にと考えている」と述べ、
「明日にでも骨格を発表したい」と語った。枝野幸男幹事長の留任や細野豪志元環境相らの起用が取りざたされている。野田佳彦前首相の登板を求める声もある。
一方、台湾籍が残っていた点については会見で「籍を放棄したと認識していた。放棄の手続きに入っており、違法ではないと考えている」と述べた。
今年3月の党発足以来初の代表選で、国会議員らによる投票と、地方議員、党員・サポーターの郵送投票を加えた計849ポイントで争われた。蓮舫氏は「二重国籍」との指摘が逆風になったが、現執行部の支援で優位な戦いを展開。503ポイントを獲得し、
前原氏(230ポイント)と玉木氏(116ポイント)に大差をつけた。前原氏は記者団に対し、「一議員に戻って蓮舫体制を支えたい」と述べ、玉木氏は「フレッシュな体制で勢いのあるスタートを切ってもらいたい」と語った。
民進党の新代表に選出された蓮舫氏には、厳しい道が待ち受ける。同党初の女性党首などの話題性だけでは、党勢回復にはつながらない。安倍政権に対抗するためにはまずは足元を固めることが先決となる。
7月の参院選は野党統一候補が一定の効果をあげ、予想より善戦したが、改憲勢力に参院3分の2を許した。責任を問う声と擁護する声が交錯し、岡田克也前代表は代表選に立候補せず蓮舫氏に後を託した。
民進党は民主党政権の失敗という負の遺産を背負ったままだ。蓮舫氏が圧勝したのは、議員や党員が歯切れの良い蓮舫氏に「刷新」を求めたためだ。
しかし台湾籍を巡る問題では発言が二転三転。前身のテレビキャスターで培った得意の発信力は、裏付けのないままだと軽い発言となり、もろ刃の剣でもある。
安倍政権に対して、どのような経済政策で対抗するのか。共産党などとの野党共闘を進めるにあたり、政策の一致点をどこに見いだすのか。発信力を発揮する前提として、軸を定めて党の立ち位置の議論を深める必要がある。
民進党は15日の代表選で、知名度の高い蓮舫氏に党再建を託した。蓮舫氏は対案路線を掲げるが、次期衆院選に向けて安倍政権への対立軸を示せるかが課題となる。
「新世代の民進党だ。みんなで新しい世代を作っていく」。蓮舫氏は代表選出後の記者会見で、党のイメージ刷新をアピールした。蓮舫氏を支持した執行部の安住淳国対委員長は記者団に「彼女の良さは突破力だ。女性が活躍する時代だから大いに頑張ってほしい」とエールを送った。
次期衆院選に向けて党勢回復の糸口がつかめない中、蓮舫氏が選ばれたのは党のイメージを一新させる切り札として「選挙の顔」を優先させたためだ。しかし、「顔」が代わっても、「中身」である政策面や野党共闘などの党運営で、岡田克也前代表の路線から独自色を打ち出すのは容易ではない。
蓮舫氏は次期衆院選に向けて共産党との協力路線は基本的に維持する方針だ。しかし、衆院選では政権選択が問われるだけに、基本政策の異なる共産党との距離の取り方が課題だ。
蓮舫氏を支援した細野豪志元環境相は記者団に「(次期衆院選は)政権選択の選挙だ。参院選とは違う対応を考えていかなければならない」とクギを刺した。参院選で岡田氏と共産党の志位和夫委員長が合同で街頭演説するなどした「民共共闘」を前面に押し出せば党内の火種となりかねない。
民進党にとって、共産党との協力はあくまで党勢低迷の局面を乗り切るための窮余の策だ。根本的に党を再建するためには、政権与党との対立軸を新たに打ち立てなければならない。
だが、道のりは困難だ。蓮舫氏は代表選出後の記者会見で「しっかりと選択していただける政党を作っていく。私たちには政策も対案がある」と対案路線を強調したが、具体化には時間がかかりそうだ。
憲法改正について蓮舫氏は「9条堅持」を掲げるが、具体的な改憲項目の議論を党内で始められる見通しはついていない。衆参両院の憲法審査会での議論には参加する考えを繰り返したが、党憲法調査会で見解をまとめることは「検討させてほしい」と慎重な発言に終始した。「議論に参加する」と前向きな姿勢を強調しても、内実が伴わなければ「以前と同じで、意見をまとめられない党」とみなされる。
当面は26日召集の臨時国会への対応が焦点となる。蓮舫氏は経済対策を盛り込んだ2016年度第2次補正予算案について、旧来型の公共事業関連が柱となっている使途を精査する方針だ。蓮舫氏が掲げる教育・子育て支援への分配重視をどれだけアピールできるかが試される。
政府が早期承認を目指す環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について、民進党は情報公開が不十分だなどとして反対してきた。しかし、民進党は経済連携協定による自由貿易を推進する立場を掲げており、反対を訴え続けるには限界もある。
蓮舫氏が岡田氏の路線を継承しただけと受け取られれば、早々に失速しかねない。前原誠司元外相は代表選後、東京都内のホテルであった陣営の会合で「残念ながらなかなかこの船出は厳しいものになる。いつ(衆院)解散があってもおかしくない」と語った。
蓮舫氏は新代表に選出直後のあいさつで「前原氏が言った『オール・フォー・オール(みんながみんなのために)』。政策も、党も、この考え方をぜひ踏襲させてください」と述べた。「オール・フォー・オール」は前原氏が代表選で使ったキャッチフレーズで、全ての人が応分の負担をし、全ての人に分配するという考え方だ。
さらに蓮舫氏は、その後の記者会見で前原氏が代表選で訴えた政策について、「政調会長にはその方向性で(政策を)まとめてほしい」とも述べ、前原氏の役職起用をにじませた。
前原氏は蓮舫氏の台湾籍問題で「リーダーになる人はうそをついてはいけない」とけん制する発言をし、前原陣営には党員・サポーター投票のやり直しを主張する議員もいた。それでも蓮舫陣営幹部は新体制の人事について「党内融和を考えるのではないか」との見方を示した。
一番の焦点は幹事長人事だ。次期衆院選の陣頭指揮を執り、岡田執行部が先の参院選で進めた野党共闘をどう継続するかのカギを握る。ただし蓮舫氏を支持した各グループは同床異夢だ。岡田執行部を支える赤松広隆元農相、旧民社党系の両グループは、枝野幸男幹事長ら現執行部の枠組みを維持したうえで、共闘の継続を求める。岡田克也前代表も蓮舫氏を後継と位置付けて支持表明した。
一方、保守系で非執行部の細野豪志元環境相の周辺によると、細野氏は岡田執行部の総入れ替えを蓮舫氏に要求したという。細野氏はいち早く蓮舫氏支援の考えを示し、議員票でも圧勝する流れを作った。細野グループからは「蓮舫氏を最初から最後まで支えた。見返りは求めるべきだ」と、幹事長職を期待する声が上がる。
蓮舫氏を支持した若手は、「10月の衆院補選で勝つには思いきった人事をやらなければいけない」と期待する。蓮舫氏は非執行部系の国会議員らに支援を求めた際、「(岡田)執行部かいらいにはならない。蓮舫路線だ」と呼びかけたという。
蓮舫氏はこれまで党三役に就いたことがなく、党運営の経験がほとんどない。党内調整は実質的には幹事長が担うとみられ、人選は次期執行部の性格に大きく影響する。それだけに、挙党態勢と刷新感の両立に腐心しそうだ。