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2016.6.9~15 : 舛添知事、逃げ道ふさがれ辞職 まっしぐら




舛添要一東京都知事の政治とカネを巡る問題が終幕へと向かいつつある。舛添知事は「第三者」の弁護士に調査をさせ、それを明らかにさせれば批判の勢いは収まり辞任を回避できると考えていた。
しかし、その目論見は完全に外れようとしている。
舛添知事は6月6日に「第三者調査報告書」を出し、「違法とはいえない」との“お墨付き”を公表した。 また公用車で行き来していたことが問題視された湯河原の別荘を売却し、宿泊費や飲食費で不適切と指摘されたものは返金する意向も示した。
これで東京都議会における7日の代表質問と8日の一般質問では追撃をなんとかかわすことができる。数日を挟んでの集中審議までは、批判の勢いは続かないだろう――。それが舛添知事の“戦法”だったはずだ。

だが、そうは問屋が卸さなかった。

「身内」であるはずの自民党からも批判

 

6月7日の代表質問では、自民党、公明党、共産党と民進党の4会派の都議が質問に立った。
知事の「身内」であるはずの自民党からも、調査結果の甘さが指摘された。第一、2014年1月に木更津のホテルで会談したという人物の名前がないではないか。
これについて議会で尋ねても、舛添知事は答えなかった。
議会軽視との批判の危険性を侵しても、秘匿にしたいものは何なのか。公明党からは、2020年東京五輪・パラリンピックの開催に際して知事に東北被災地の現状やニーズを把握してほしいとの訪問要請があったにもかかわらず、 知事は「時間がとれない」とこれを断り、湯河原の別荘に滞在していたことが暴露された。

日本共産党からは、報告書は知事の言い分を鵜呑みにしたもので、裏付けの検証がないことが指摘された。また知事の公務として行った講演の実態が舛添政治経済研究所の事業の一環であり、 立場と肩書きを利用したビジネスである疑いも提起された。民進党からも、調査報告書の正当性への疑義が出されている。

翌8日の一般質問では都議15人から次々と質問が飛び、舛添知事の立場はいっそう苦しくなった。各自が持つ時間は10分前後と短かったが、鋭い内容が舛添知事に突き刺さったからだ。

公明党・斉藤泰宏都議が感じた大きな疑問

 

「私に許されている時間は12分。その間にどのように鋭く知事に切り込むべきか、悩ましいところだ」
質問に立つ予定だった公明党の斉藤泰宏都議は7日夜、その心中を吐露している。知事のスキャンダルが発覚する以前から、6月の定例会で特別支援学校や難病者の就労支援について質問すべく準備してきた。
知事の公私混同問題を追及すれば、これら本質的な質問を行う時間が必然的に短くなってしまう。「都民のための重要な施策が、知事のスキャンダルのために後回しになってはいけないという思いもある。
だがいまは何より都民の信頼を回復させることを優先すべきだと思う」。
斉藤都議は大学時代に法曹の道を目指したこともあった。だからこそ、舛添知事の「第三者による調査報告書」に大きな疑問を感じていた。「舛添知事が選任した佐々木善三弁護士は、猪瀬直樹前知事の弁護人として、 略式起訴を勝ち取った弁護士。小渕優子代議士の政治資金収支報告書虚偽記載問題でも第三者委員会の委員長として報告書を作成している。その内容を見ると、とても中立の立場に立っているとは思えない」。
小渕優子代議士の政治資金収支報告書虚偽記載問題とは、2014年10月に週刊新潮が後援会の観劇費用2600万円の未記載を報じたことをきっかけに、同氏の関連団体の収支報告書の繰越金額よりも実際の預金額が約1億円も少ないことが発覚した事件のことだ。
この事件の主犯は故・恵三氏の時代から地元事務所を牛耳っていた折田謙一郎前群馬県中之条町長で、2015年10月9日には政治資金規正法違反で東京地裁から禁固2年執行猶予3年の有罪判決を受けている。
この事件の第三者委員会の委員長を務めたのが佐々木氏だが、10月19日に調査結果を公表した時の発言が問題視されたことがある。 「(折田氏に)責任感が強くなかったら(1億円のずれを)放置していた可能性もある」
まるで折田氏に強い責任感があったがゆえに、違法行為が行われたような言い方だが、報告書にも「単純に折田氏を批判することに躊躇を覚える」との意見が記載され、これが「公正さを欠くのではないか」と批判された。
8日の一般質問では、斉藤都議の口から第三者報告書に対する厳しい疑問が次々と飛び出した。「誰に対して何に対して、厳しい眼を持つ第三者なのか」「客観性のある調査ができる弁護士とは思えない」「(知事が)自分を守るために調査を依頼したのではないか」。

政治とカネに執着した哀れな姿

 

また新党改革時代の政治資金の使途について、舛添知事は「自民党時代は党の内規に基づき、厳しくチェックされていた。
新党改革になってそういう内部チェックがなくなったので慢心した」と弁明していたが、斉藤都議はこれを次のように切り捨てた。
「そもそも知事が自民党を離党した際は、当時の鳩山首相と小沢幹事長の政治とカネの問題で、自民党の対応の甘いことで離党し、新党改革を立ち上げたはず。
慢心が起こったというのでは全くの論理矛盾だ」。さらに「新党改革時代、そして都知事になってからも一貫していえることは、政治とカネに執着した哀れな姿」とまで言い切っている。
こうした批判をじっと聞いていた舛添知事は、「心から深く反省するとともに、信頼回復に努めたい」と繰り返すのみで、相変わらず自分から辞める様子を見せてはいない。
この後に自らの給与を減額する条例案を提出する意向を示したが、これは集中審議の日程を決する理事会の開催前の再度の“ガス抜き”だろう。吝嗇家(りんしょくか)と言われる舛添知事にとっては給与減額は知事の地位を失うよりもマシということで最大の譲歩なのかもしれないが、それで都民の怒りが収まると思っているのだろうか。
すでに他の逃げ道はふさがれており、辞職までまっしぐらの舛添知事。しかしてそのタイミングはいつなのか。与党が参院選との“ダブル選”を嫌がっているため、「9月辞職説」が聞こえている。

参院選が終われば、リコールが始まる可能性も大きい。リコールには約147万もの有権者の署名が必要になるが、多くの都民は進んでこれに応じるだろう。いくら舛添知事が抗おうとも、それを止めることは不可能だ。すでに政治の歯車は大きく動き出している。

集中審議、13日開催=徹底追及の姿勢鮮明―舛添氏問題・都議会

 

舛添要一東京都知事の政治資金流用問題などをめぐり、都議会の総務委員会は9日の理事会で、13日に舛添氏の出席を求め、集中審議を開くことを決めた。本会議での代表質問や一般質問で従来の説明を繰り返し、 続投の構えを崩さない舛添氏を批判する議会側が、徹底追及の姿勢を鮮明に打ち出した。
各会派は事実関係の詳しい説明を求めるとともに、舛添氏の責任を厳しく問う方針。共産党など野党側は舛添氏の対応が不十分な場合、地方自治法に基づき強力な権限を持つ調査特別委員会(百条委員会)の設置も視野に入れる。
共産党はまた、会期末となる15日の本会議に、舛添氏の不信任決議案を提出する方向で準備している。こうした野党の動きに与党の自民、公明両党がどう対応するかが今後の焦点となる。
集中審議は、質問内容を事前に通告する代表質問や一般質問と異なり、一問一答形式で行われる。答弁が不十分な場合は、決められた時間内で繰り返し質問できる。
当初は「知事の説明を聞いてから」と慎重姿勢だった自公両党も「説明が不十分だ」と判断。全会一致で開催が決まった。政治資金流用問題に加え、高額な海外出張費、公用車利用の在り方を取り上げる。
総務委の加藤雅之委員長(公明党)は、記者団に「当然、1日では終わらない」と言明。会期終了後の16日以降を含め、複数回開く考えを示した。
日程に関し、自公両党は準備に時間を要するとして、13日は舛添氏へ資料請求するにとどめ、16日以降に開くべきだと主張。しかし野党側が13日の開催を譲らず、最終的に自公が歩み寄った。 

6/13 舛添知事 集中審議 公明・共産・民進が辞職要求

 

東京都の舛添知事の政治資金などを巡る問題で、都議会では一問一答形式の集中審議がに行われ、各会派の追及に対し舛添知事の答弁が続いていますが、同じ内容の説明を繰り返す場面も多く見られ、これまでに、自民党を除く公明党、共産党、民進党の3つの会派が辞職を求めました。
舛添知事に対する集中審議は午後2時半から行われていて、はじめに、自民党の鈴木隆道議員が説明責任と出処進退などを問いただしたうえで、家族で泊まった千葉県のホテルで開いたとする会議の相手について氏名を明らかにするよう求めました。
これに対し、舛添知事は「政治の機微に関わるため、政治家の信義として外に出せない。名前を明らかにするのはご容赦願いたい」とこれまでの答弁と同じように氏名は公表できないという考えを重ねて示しました。
また、政治資金パーティーの出席者20数人分のサンドイッチ代として喫茶店に支払った1万8000円の支出を「不適切ではない」とした弁護士の調査がどのように行われたのか問われたのに対し、舛添知事は「弁護士が2回ほど電話したが、断られた」として店側には直接、 確認できなかったことを明らかにしたうえで「事務スタッフにヒアリングをして、領収書の存在や筆跡も確認した。私自身はきちんと勉強会をやっている。全く何の疑いもない」などと答えました。
公明党の松葉多美子議員が、政治資金で購入した多数の美術品を解散した政治団体から現在の政治団体に引き継ぐ際に収支報告書に記載していないのは資産隠しではないかと問いただしました。
これに対して、舛添知事は「私物化する気は全くない。政治団体の政治資金で購入したものなので、現在の政治団体「泰山会」にそのまま引き継いだ。私の認識が間違っているのであれば、どういう形で是正できるか考えたい」と述べました。
また美術品の保管場所や贈り先の氏名などを、20日の集中審議までに示すよう求められたのに対し、舛添知事は「しっかり精査して、条件が整えば示せるようにしたい」と述べ、できるだけ早く、リストを作って公表する考えを示しました。
そのうえで公明党の松葉議員は、「オリンピック・パラリンピックを語る資格はなく、舛添知事は辞職すべきだ」と述べました。続いて共産党の曽根肇議員がホテルで開いたとする会議の相手について当初は「事務所の関係者ら」と説明していたにもかかわらず、 出版社の社長1人だったと説明が変わったことについて問いただしました。
これに対し舛添知事は、「『事務所関係者ら』と一般的な形でおおまかに言ったのは反省している」などと述べたうえで、社長にどのように連絡したのかについては「つぶさに覚えていない」と答えたほか、相手の服装については「細かく覚えていないが、ラフな格好で来たと思う」などと述べました。
さらに社長が実在する根拠があるのかと問われ、「政治の機微に関わる問題についてお答えするのはご容赦頂きたい」と同じ説明を繰り返しました。 またホテルの領収書には、ただし書きがなく、明細書をあえて切り離し、家族旅行を政治活動として報告できるようにしたのではないかと指摘されたのに対し、「そういう意図はない。会計責任者が切り離して添付したのだと思うが、今後は間違いのないようにしたい」と述べました。
共産党の曽根議員は、舛添知事に辞職を求めたうえで、より厳しい調査権を持つ百条委員会の設置を求めました。 民進党の西沢圭太議員が、舛添知事が政治資金パーティーで参加者に配ったとされる自身の似顔絵入りのまんじゅうについて「購入したとされる政治団体はすでに解散していたはずで、なぜ、この団体が購入しているのか」と問いただしました。
これに対して舛添知事は「確認したところ、弁護士が報告書を書く際、別の政治団体を書くべきところ記入ミスをした。大変申し訳ない」と述べ、まんじゅうを購入したのは現在の政治団体の「泰山会」だったと答えました。そのうえで、民進党の西沢議員は舛添知事に辞職を求めました。 集中審議では旧維新の党の民進党都議団が質疑を行ったあと、かがやけTokyoの音喜多駿議員は高額だと指摘される舛添知事の海外出張費のうち、飛行機のファーストクラスの利用を質問しました。
これについて舛添知事は、「私の場合、非常にタイトなスケジュールになることがあり機内でゆっくりしたいという思いがあったが、これからは経費節減に努めたい。最大の反省はこれまでの前例を踏襲して、事務方が上げてきたものを何のチェックもしてこなかったことであり、きちんと改めたい」と答えました。

6/13 舛添知事 最後の発言全文「どうか少しの猶予を」

 

東京都の舛添知事は、13日の都議会・総務委員会の集中審議の最後に、次のように発言しました。
これまで都民の皆様また、都議会の皆様に大変なご迷惑、ご心配を、おかけいたしておりますこと、改めて心から陳謝を申し上げます。
私は「東京を世界一の都市にしたい」、そういう思いで、都知事に当選させていただきました。これまで一生懸命、私は、都政の発展のために努力をしてきたつもりでございます。
しかし、今回一連のこの私に関する問題でさらなるご迷惑を皆様におかけしております。
そういうなかで、私は、自分なりの説明をしようと思いましたが、「知事自身、また、知事の関係者の説明では、それは信頼できない」と、そういう声がありましたので、検事出身の弁護士の皆様に厳しい目で調査報告書を出していただきました。
そして、主に、国会議員時代のことでありますけれども、さまざまな不適切があったということを指摘されました。そういうなかで、私は、まず、いろんなことで、身を処していかないといけないというふうに思います。
まずは、神奈川県湯河原町の施設は先ほど申し上げましたように売却をいたします。そして、不適切だと指摘されました項目につきましては返金し、もちろん自分の費用で返金し、それを慈善団体のようなところに寄付したいと思っております。
それから政治資金で購入した美術品につきましても都立病院であるとか福祉施設とかにぜひお使いいただきたいと思っています。財テクをやる気は全くございません。
きょうも私は一生懸命、皆様のご質問にお答えしたつもりでありますけども、しかし、なお、厳しいご批判があるのは重々、この胸に刻んでおります。
そういうなかで、何人かの委員の方々から、『不信任案を提案したい』ということがありました。極めて重く受けとめております。
そういうなかで、私はきょうは都民の皆様、都議会の皆様にお願いしたいことがございます。それは、もし、私に対する不信任案が可決された場合には、法律上は、私が辞任するか、ないしは議会を解散するかの選択を迫られます。
そうしますと、いずれにしましても選挙ということになります。その選挙の時期が、どうしてもリオデジャネイロのオリンピック・パラリンピックのときに重なります。
私は、知事として、断腸の思いでありますのは、次期開催都市で、こういう選挙というのをリオ五輪ときにやるということは、本当にこの国家的大事業である、2020年大会にとって、極めてマイナスであり、もちろんこれは私の不徳の致すところの発端であることは、重々承知をしております。
どうか、少しの猶予をいただきたいというふうに思ってます。それは、私が知事の座に連綿としてしがみつくと、そういうことでは、ございません。私は、すべての給料をご辞退申し上げて、全身全霊、都民のため、都政のために働きたいと思っております。
そして、選挙というようなことで、リオ五輪と重なりますので、そういう混乱はどうしても、公益に、これはそぐわないと、そういう極めて厳しい判断をしているところでございます。
どうか、そういう意味で、この時期を、猶予していただいて、そして、そのうえで、私が、都知事としてふさわしくないと、そういうご判断を都議会の皆様がなさるときには不信任案を提出していただければと思います。私の思いは、そういうことでございます。


6/15 舛添知事 辞職願提出 午後6時再開の本会議で決定へ

 

東京都の舛添知事は、政治資金などを巡る一連の問題で都議会が不信任決議案を全会一致で可決することが確実となったことを受けて、15日午前に議長に辞職願を提出しました。都議会の本会議は午後5時前に始まりましたが、いったん休憩に入り、 午後6時をめどに再開される予定で、この中で舛添知事の辞職が正式に決まる見通しです。
東京都の舛添知事の政治資金などを巡る一連の問題で、都議会は自民党や公明党も含めた7つの会派が舛添知事に対する不信任決議案を15日の本会議に提出することを決め、全会一致で可決されることが確実となっていました。
こうした状況を受け、舛添知事はみずから辞職することを決め、午前中、議長に辞職願を提出しました。
辞職願の提出を受け、各会派では不信任決議案を取り下げることを決め、都議会の本会議は午後5時前に始まりましたが、会議の資料の差し替えや確認が必要となり、時間を延長するための手続きを行うとして、いったん休憩に入り、午後6時をめどに再開される予定です。
この中で辞職願が了承され、舛添知事の辞職が正式に決まる見通しで、舛添知事はおととし2月の就任以来、およそ2年4か月での辞職となりました。
また、舛添知事から議会で発言したいという要望があり、閉会の直前に発言の時間が設けられ、舛添知事が辞職を決断した理由などについて説明するということです。
一方、記者会見は16日以降、開く方向で調整しているということです。

6/15 舛添知事 辞職議会の発言全文

 

発言をお許しいただきありがとうございます。私自身、都議会における最後の発言となりますので、少しお時間を頂戴いただければと思います。平成26年2月に都知事に就任しまして以来、 東京を世界一の都市とするため、私なりに全力を尽くしてまいりました。誰もが人生の豊かさを実感できる都市にしたい。少子高齢化の流れのなかで、保育施設の充実や地域包括ケアシステムの構築に取り組み、 一定の成果もあったのではないかと思っております。自然災害の脅威に対しましては、特に「東京防災」が好評をいただき、ありがたいことでございました。
そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の成功のため全身全霊取り組んできたつもりでございます。今回、私自身の問題によりまして、都民の皆様から頂きました4年間という任期の途中でこのような形となり、 反省と心残りの念は尽きませんが、全て自らの不徳の致すところであります。私が最も懸念いたしましたのは、オリンピック・パラリンピック大会への影響であります。リオデジャネイロ大会を控えるなかでの選挙は、 次期開催都市としてふさわしくないと考えました。4年後の東京大会も同様であります。この事態を避けたいと思いました。
しかし、これ以上、都政の停滞を長引かせることは私にとっても耐え難いことでございます。従いまして、私が身を引くことが一番だと考えるに至り、 都知事の職を辞する決意を致しました。2年4カ月という短い期間ではございましたが、皆さまには私の至らぬ都政運営を支援し、支えていただき感謝をしております。これからは一都民、 一国民としてオリンピック・パラリンピック東京大会の成功、東京都の発展を心から祈っております。以上をもちまして、私の東京都知事としてのごあいさつを終えたいと思います。ご静聴いただき、誠にありがとうございました。


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