Forest Studio

2016.4.11 : G7外相会合が「広島宣言」

広島市で開かれていたG7=主要7か国の外相会合は11日午後閉幕し、G7として初めてとなる、核軍縮・不拡散の分野に特化した成果文書「広島宣言」を発表し、「核兵器のない世界」の実現に向けて、世界各国の政治指導者をはじめ多くの人たちに、被爆地・広島、長崎を訪問するよう呼びかけました。
来月の伊勢志摩サミットに先立って広島市で開かれていたG7外相会合は、2日間の日程を終えて、11日午後閉幕しました。
議長を務めた岸田外務大臣が記者会見し、会合の成果などをまとめた共同声明に加えて、被爆地で開催されたことも踏まえ、G7として初めてとなる核軍縮・不拡散の分野に特化した成果文書「広島宣言」を発表しました。
「広島宣言」は、第2次世界大戦で広島や長崎が被爆したことを巡り、「原爆投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験した」と指摘したうえで、「核兵器のない世界」の実現に向けて、世界各国の政治指導者をはじめ多くの人たちに、被爆地・広島、長崎を訪問するよう呼びかけています。
また、文書は「核兵器保有の透明性を向上させたG7の核保有国の努力を歓迎する」としたうえで、保有している核兵器の数を明らかにしていない中国を念頭に、「他国にも同様の行動を求める」として、透明性の向上を求めています。

 

共同声明 テロ対策に最も多くの分量

会合の成果などをまとめた共同声明では、「テロ・暴力的過激主義対策」に最も多くの分量が割かれ、テロを「全世界的な喫緊の安全保障の脅威」と位置づけたうえで、テロへの具体的な対抗策を盛り込んだ「G7テロ対策行動計画」を来月の伊勢志摩サミットで採択するとしています。
また、ことしに入っての北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射について、「最も強い表現で非難する」としたうえで、北朝鮮にこれ以上、挑発的な行動をさせないため、国際社会に対し、国連の安全保障理事会が決定した北朝鮮に対する制裁措置を完全に実施するよう呼びかけています。
このほか、去年の外相会合に続いて、今回も共同声明から独立させる形で海洋の安全保障に関する文書が発表され、直接の名指しは避けながらも、中国が南シナ海などで海洋進出の動きを活発化させていることにG7として懸念を共有するとしたうえで、大規模な埋め立てや軍事拠点化の動きを自制するよう求めています。
また、南シナ海の島々の領有権を巡って中国と対立しているフィリピンがオランダの仲裁裁判所に申し立てを行っている問題も踏まえて、国際紛争の当事国に対し、平和的解決のために司法が下した決定を完全に履行するよう求めています。

岸田外相「歴史的な一歩に」

広島市で行われたG7=主要7か国の外相会合で議長を務めた岸田外務大臣は、閉幕にあたって記者会見し、各国の外相らによる原爆資料館の訪問について、外相らの資料館の展示への関心が高く、30分の予定だった視察が50分に延びたことを紹介しました。
そのうえで、岸田大臣は「各国の外相らに被爆の実相に触れてもらったことは、『広島宣言』の発表と合わせて、『核兵器のない世界』に向けた国際的な機運を再び高める歴史的な一歩になった」と述べ、成果を強調しました。
また、日本が重視している、中国による南シナ海での軍事拠点化の動きや、北朝鮮の拉致、核やミサイルの問題について、「G7のアジアからの出席国は日本だけなので、ほかの国から見ればアジアの問題に対する意識は薄いのではないかと心配していたが、想像以上に多くの意見が出て、 ときには激しいやり取りがあるなど、特に充実した議論ができた」と述べ、各国の間で問題意識の共有が進んだという認識を示しました。

各国の外相 ツイッターに感想を投稿

各国の外相は、広島市の平和公園を訪問し、原爆の犠牲者を追悼したことについて、自身のツイッターに感想を投稿し訪問の意義を強調しました。 アメリカのケリー国務長官は自身のツイッターで、「広島市の平和公園と原爆資料館を訪れる初の国務長官となったことを誇りに思います」とつぶやき、みずからが記帳した芳名帳の写真を投稿しました。
芳名帳には、ケリー長官の署名とともに、「世界中の人々がこの資料館を見て、その力を感じるべきだ。ありのままで、厳しく、そして人を引き付ける展示は、私たちに核兵器の脅威を終わらせる義務があるだけでなく、戦争そのものを避けるために全力を挙げなければならないことを思い起こさせる」と記されています。
さらに、「戦争は最後の手段であり、決して最初の選択肢であってはならない。この資料館は、世界中の人々が切望する平和な未来を築くため、そしてこの世界を変えるため、もっと努力するよう訴えかけている」と記され、平和な世界の実現に向けた決意を強調しています。
フランスのエロー外相は原爆慰霊碑に献花した写真とともに、「広島の原爆慰霊碑の前で追悼した。強く心を動かされる象徴的な瞬間だった」と投稿しました。
イギリスのハモンド外相は、原爆資料館でみずからが記帳した芳名帳の写真を投稿しました。ハモンド外相は芳名帳に、署名とともに、「ここは重要な場所で、心を動かされる。展示物は、争いを平和的に解決する義務や、戦争が一般市民に与える計り知れない影響を痛感させる。核兵器がなく、 紛争が対話と妥協によって解決される世界のために共に一層の努力をしよう」と記し、核軍縮や平和のために各国が協力する必要性を訴えました。
イタリアのジェンティローニ外相は「歴史的な訪問だった。アメリカは、ケリー国務長官が現職閣僚として初の訪問だ」と投稿しました。
ドイツのシュタインマイヤー外相も、ドイツ外務省のツイッター上で、自身の記帳内容を公開し、この中で「広島と長崎の人たちの苦しみや死は、われわれに対する警告であり、平和や核兵器のない世界の実現に向けた努力を決してやめてはいけないと求めている」と述べ、核兵器廃絶への決意を示しています。

ページのtop へ