2016.3.9 :高浜原発3・4号機 運転停止命
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機について、大津地方裁判所は「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、
関西電力は十分に説明していない」として運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。
稼働中の原発の運転の停止を命じる仮処分の決定は初めてで、関西電力は速やかに原子炉を止めなければならなくなりました。
福井県にある関西電力・高浜原発3号機と4号機について、滋賀県内の住民29人は、再稼働前の去年1月、運転の停止を求める仮処分を申し立てていました。これについて大津地方裁判所は、3号機と4号機の運転の停止を命じる決定を出しました。
決定で大津地裁の山本善彦裁判長は「福島の原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法、基準となる地震の揺れの策定についても危惧する点がある」などと指摘しました。さらに、「想定される地震の最大の揺れを評価する方法のもととなるのは、
過去に起きた14の地震で、サンプルの少なさからすると科学的に異論のない方法と考えることはできない」と指摘しました。
そのうえで、「津波対策や避難計画についても疑問が残り、住民の権利が損なわれるおそれが高いにもかかわらず、安全性について電力会社は十分な説明を尽くしたとは言えない」として、
3号機と4号機の運転の停止を命じる決定を出しました。
高浜原発は、ことし1月に3号機が、先月に4号機が、新しい規制基準のもとで再稼働しましたが、4号機では、再稼働の3日後の先月29日に原子炉が自動停止するトラブルが起き、関西電力は、早期の運転の再開を目指しています。
関西電力は、9日の決定の取り消しを求めて異議を申し立てる方針ですが、仮処分は直ちに効力が生じるため、稼働中の3号機の原子炉を速やかに止めなければならなくなりました。稼働中の原発の運転の停止を命じる仮処分の決定は初めてです。
高浜原発3号機と4号機を巡っては、福井地方裁判所が去年4月、再稼働を認めない仮処分の決定をしましたが、去年12月に福井地裁の別の裁判長がこの決定を取り消し、再稼働を認める判断をしていました。
福井県にある高浜原子力発電所3号機と4号機の運転の停止を命じる仮処分の決定を受けて、関西電力は、稼働中の3号機の原子炉を止める手続きに入ります。
関西電力によりますと、3号機の原子炉に核分裂反応を抑える制御棒を入れて徐々に出力を落としていき、出力がゼロになるまでに、およそ10時間かかる見込みだということです。
その一方で、関西電力は大津地方裁判所に、9日の決定の取り消しを求める異議の申し立てと、仮処分の執行の停止を求める申し立てをすることにしています。申し立てがあった場合、
大津地裁では今回とは別の裁判官が、改めて判断することになります。
仮処分の決定について関西電力はコメントを発表し「当社の主張を裁判所に理解いただけず極めて遺憾であると考え、到底承服できるものではない。この決定にしたがい、安全を最優先に運転中の高浜原発3号機を停止するが、今後速やかに不服申し立ての手続きを行い、 早期に仮処分命令を取り消していただくよう、高浜原発3号機と4号機の安全性の主張と立証に全力を尽くす」としています。