2016.2.20 : 定数削減巡り現首相と前首相 異例の論戦
衆議院予算委員会の集中審議で、民主党の野田・前総理大臣が、4年前、当時の自民党の安倍総裁との党首討論で議員定数の削減を条件に示して、
衆議院を解散したにもかかわらず、安倍総理大臣は約束を果たしていないと批判しました。
これに対し、安倍総理大臣は、定数削減を実現できなかった責任は民主党にもあると反論したうえで、
自民党の方針から時期を前倒しして、去年の簡易国勢調査に基づき定数の10削減を実現する考えを示しました。
衆議院予算委員会の集中審議は、総理大臣経験者が現職の総理大臣に直接挑む、極めて異例の論戦となりました。
この中で、民主党の野田・前総理大臣は、4年前、総理大臣として、当時の自民党の安倍総裁との党首討論で、議員定数の削減を条件に示して衆議院の解散に応じた経緯を踏まえ、
「安倍さんが、次の通常国会で定数削減を含む選挙制度改革を『しっかりやります』と言ったのを受けて、私は解散し、約束を果たした。国民の前での約束であり、
民主、自民、公明の3党で合意文書をまとめた。国民にうそをついたことにならないか。満身の怒りを込めて抗議したい」と批判しました。
これに対し、安倍総理大臣は「民主党が第1党だったときには民主党に責任があり、結果をしっかりとお互いにかみしめるべきで、共同責任だ。
われわれは定数の『0増5減』を実行したが、その区割り法案に民主党が反対したことは大変残念だ」と反論しました。
さらに、野田氏は「定数削減を主張してきた政党の足並みは、ほぼそろっている。民主党は有識者調査会の答申をそのまま法制化し、
都道府県に小選挙区の数を割りふる計算式を『アダムズ方式』と呼ばれる仕組みに変更して、定数を10削減する。安倍総理大臣の指導力で自民党に徹底してもらいたい」とただしました。
これに対し、安倍総理大臣は「去年の簡易国勢調査にのっとり区割りを調整する際、定数の10削減を行う。先送りはせずに決めていく。
まだ自民党で議論しているが、総裁としてその方向に議論をまとめていきたい」と述べ、4年後の大規模な国勢調査を受けて定数削減を行うとしている自民党の方針から時期を前倒しして、
去年の簡易国勢調査に基づく区割りの見直しに合わせて定数の10削減を実現する考えを示しました。
さらに、野田氏は「一定の前進だとは思うが、ここまで来るのに遅きに失したということだ。定数10削減で終わるのではなく、引き続き定数削減も含めた選挙制度改革を協議していくと確約してもらいたい」と求めました。
これに対し、安倍総理大臣は「来週22日に有識者調査会の答申に対する考え方を各党が持ち寄る。わが党がどういう方針を取るか、総裁として指導力を発揮していくつもりだ。ただ、
まずはどのように進めていくか、衆議院議長の元で議論してもらいたい」と述べるにとどめました。
一方、野田氏は、安倍政権の経済政策・アベノミクスについて、「民主党政権時のGDP=国内総生産の伸び率は、実質で年平均1.7%だが、
安倍政権の3年間は0.6%だ。アベノミクスとか三本の矢とか言ったわりには低くないか。きちんと数字に向き合う素直さを持ってほしい」と指摘しました。
これに対し、安倍総理大臣は「デフレを肯定するのであれば、これはいい数字ということになるが、われわれは違う。名目GDPが実質GDPを上回る、しっかりとデフレから脱却しているという姿を作った。成長と分配の好循環を回していくことで、3つの的に向かって、しっかり政策を進めていきたい」と述べました。
また、安倍総理大臣は、来年4月の消費税率の10%への引き上げに関連して、さらに引き上げる考えがあるのか問われたのに対し、 「全くそんなことは考えていない。私が総理大臣を務めていると見通しができる将来においては考えていない」と述べました。
民主党の野田・前総理大臣は、国会内で記者団に対し、「私が質問に立ってよいのかという気持ちを持っていたが、議員定数の削減がこう着状態のまま4年目に入り、
決着をつけなければならない時期なので、その役割を最大限、果たしていきたいと思い、質問に立った」と述べました。そのうえで、野田氏は、「2013年の通常国会で、
定数削減の結論を出さなかったことは、残念ながら、安倍総理大臣はうそをついたということだ。それをもっと恥じてほしいと思うが、開き直った答弁が多く、責任感がないことを痛感した。
安倍総理大臣のリーダーシップで、定数削減の時期を前倒しするという話だが、あまりにも後ろ向きだった自民党が、ようやく各党並みになってきたというだけで、評価する話ではもともとない」と述べました。