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2015.10.11_5 : 世界記憶遺産:「南京大虐殺」ユネスコ登録
 「慰安婦」は却下 中国が申請

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は9日午後(日本時間10日未明)、重要な歴史文書などを認定する世界記憶遺産に、中国が申請した旧日本軍による「南京大虐殺」に関する資料を登録したと発表した。 中国による従軍慰安婦に関する資料の登録申請は却下した。一方、日本が申請した第二次大戦後のシベリア抑留者の引き揚げ記録「舞鶴への生還」と京都市の東寺に伝わる国宝「東寺百合文書」は登録が決まり、日本の記憶遺産は5件となった。

日本と中国では南京大虐殺の犠牲者数などで見解が分かれており、記憶遺産への登録は中国の歴史認識にユネスコの「お墨付き」を与えかねない。日本政府は「ユネスコの政治利用」と反発しており、遺産登録を受け、歴史認識を巡る日中両政府の摩擦が再燃する可能性がある。
南京大虐殺関連では、戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)と南京軍事法廷の記録などが登録された。中国はユネスコに提出した申請書類で「極東裁判での中国人犠牲者数は遺棄された遺体が含まれておらず、南京軍事法廷は『少なくとも30万人の中国人が殺害された』と結論付けている」と指摘。 その上で「提出資料は、南京大虐殺が歴史的事実であることの証拠であり、議論の余地のない信頼性と信ぴょう性を有する」と主張している。

一方、菅義偉官房長官は2日の会見で「中国はユネスコを政治的に利用している。過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調し、極めて遺憾だ」と批判。中国に抗議し、ユネスコにも懸念を伝えていることを明らかにしていた。

ユネスコは今月4〜6日にアラブ首長国連邦のアブダビで国際諮問委員会を開き、各国からの新規申請約90件を審査。専門家の勧告を受けてボコバ事務局長が登録案件を決定した。南京大虐殺を含めた登録理由、却下理由は近く公表されるが、登録基準には資料の「真正性」が含まれており、 中国側の申請理由が大筋で認められたとみられる。

従軍慰安婦問題では、韓国も独自に記憶遺産への申請準備を進めており、将来、登録される可能性は消えていない。

南京大虐殺
日中戦争時の1937(昭和12)年12月、旧日本軍が当時中国の首都だった南京を占領する際、多数の市民を殺害、略奪した事件。犠牲者数をめぐって日中間で議論があり、日本側の研究者は「20万人を上限に、4万人、2万人などの推計がある」とする一方、 中国側は30万人以上と主張。日本政府は具体的な人数については諸説あり、正確な数の認定は困難との見解を示している。

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