2016.5.26 : 伊勢志摩サミット 地元は観光振興に期待
三重県志摩市を会場に、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が26〜27日、開催される。国内の地方都市を舞台にするのは、沖縄県、北海道に続いて3カ所目だ。会場決定から約1年、
ホスト県の三重の受け入れ準備も大詰めを迎えた。一方で、伊勢志摩地方は観光地としての知名度がありながら、人口減少と地域経済の疲弊を抱えている。県やシンクタンクは開催による経済効果を相次いで発表、
期待する地元の声も大きい。サミットは地方創生につながるのか。現状をまとめた。
サミットを迎える鈴木英敬知事は今月6日の記者会見で「三重県や伊勢志摩を知ってもらう千載一遇のチャンス。世界中の人から『三重県でやって良かった』と言ってもらいたい。歴史に残るサミットになってほしい」と期待を示した。
県内では、G7首脳や国内外のメディアのもてなしの準備が進む。50以上の企業や団体の協賛などで、10万株を超す花をサミット会場周辺や主要駅、幹線道路沿いなどに植える運動が続く。
また、市民約300人が外国語案内ボランティアとして海外メディアらに応対する。15日に結団式があり、20日から国際メディアセンターや名古屋駅など主要駅で活動を始めた。
県は直接的な経済効果を約480億円と見積もったが、地元の百五経済研究所(津市)はサミット後、観光客が2014年の5倍に、国際会議の開催回数が10倍以上になることを前提に、経済効果は開催後5年間の累計で約1110億円になるとの試算を発表した。
大和証券も今後5年間で観光客による県内での消費額が約1750億円に達するとしている。
鈴木知事は「若い人たちに魅力的な場となることが本当の地方創生。それはまだこれからだ。サミットで自動的に県内が潤うわけではない。チャンスをつかみ取る意欲を一人でも多くの県民に持ってもらえるかどうかが大事だ」と語った。
一方で、伊勢、志摩、鳥羽市の観光・宿泊施設の大半で、今年の大型連休期間中の客足が前年に比べ減少した。公益財団法人「中部圏社会経済研究所」は、三重県の5月の観光客数は前年の約343万人より26万9000人減少、観光消費額は約32億円減ると試算した。厳重な警備の影響だ。終了後の挽回に期待がかかる。
伊勢志摩地方は三重県伊勢市の伊勢神宮などが有名な観光地だ。2013年、社殿を20年に1度一新する第62回式年遷宮が神宮であり、同年の参拝者数は過去最高の1420万人に達した。だが、遷宮翌年から減少に転じ、次回遷宮までの間は低迷が続くのが通例だ。
次の遷宮は33年。神宮の参拝者の減少は、周辺の観光地の客足にも影響する。「新たな仕掛けが必要だ」と頭を悩ませていた県の観光担当職員はサミット開催決定を受けて「持続的な誘客に向けて希望が見えた」などと話した。
観光以外では基幹産業に乏しく、県北部より人口減少が著しい伊勢志摩。産業界や学会の有識者らで構成する「日本創成会議」が14年5月に発表した40年の推計によると、同地方の3市1町とも大幅な人口減が見込まれ、「消滅可能性都市」とされた。
地元は、日本人の国内旅行者が伸び悩む中、サミットを機としたインバウンド(訪日外国人)の増加による地方創生への期待が高まっている。